都筑道夫さんが、長年に亘って書き続けた「捕物帳」なのですが、そんじょそこらの「捕物帳」と思ったら、大間違い。
まず、登場人物がカッコよくない!(笑) 貧乏長屋にたむろする大道芸人たちが、主人公。その中心人物は「もうずーっとあーた、浪人でしょ?」と一目でわかってしまう、砂絵のセンセー。無腰でボロ袷を年がら年中着ていて、さかやきもボーボー。風采の上がらないことこの上なし!って感じなのである。だけれど。ひとたび、不思議な事件にかかわると、ことごとくその謎を解いてしまう。そして、礼金をいただき、長屋のみんなと酒盛りをするのだ。
センセーを助けるのが、これまた個性的な連中ばかり。「へぇ、そんな商売があったの?」というようなさまざまな大道芸の達人たちが、センセーの号の下、江戸中を走り回って、事件の手がかりを探してきたり、犯人を捕まえる手助けをしたりする。
この作品のいいところは、決して、奇麗事じゃないってところかな・・・。
事件はまぁ、解決をみるわけだけれど、センセーたちは、必ずしもお上の手助けをするとは限らず、時には後ろ暗いところのあるお金持ちから、口止め料をもらってみてみぬふりをしてあげたり、っていうのが、また、今までの捕物帳とはちょっと違って、いい感じなのです。
弱い立場の人が泣きをみることのないように、っていう精神を貫きつつ、同情に値するところは受け入れて、っていうさじ加減がとてもいいのです。
で。このシリーズの全作ではないのですが、落語のネタをうまーく下敷きにした作品がたくさんあります。
「らくだ」「野ざらし」「長屋の花見」といった今でもお馴染みのネタを、都筑さんの上手なアレンジで、捕物帳の事件に仕立て替えられています。
落語好きなら、楽しめること請け合い! そして時代小説って古くさくない?と思っている人に「こんなポップな時代小説、捕物帳があるんだ!」と楽しんでもらえるに違いありません。
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